横浜日独協会

ドイツ中小企業との対話

横浜日独協会会長 成川 哲夫(2024年10月)

今年の8月、ドイツの中小中堅企業の次世代オーナーおよびファミリービジネス研究者(ツェッペリン大学教授)の視察団が来日した。 彼らは、ドイツ企業の将来のリーダーとしての経営視点を広げるために、日本の経済、社会、産業構造、中小中堅企業を取り巻く情報を得る目的で、日本滞在中、個別企業の訪問視察とともに、経済同友会に対してもブリーフィングの要請があり、私と数名で面談した。
日本とドイツの中小中堅企業(SME)は、両国経済において重要な役割を果たしている。企業数の割合では、両国ともに99%を超え、経済全体にとって欠かせない存在となっており、特に雇用創出、技術革新、地域経済の発展において重要な貢献をしている。 しかし、そのビジネスモデル、経営手法、国際展開においては日独で大きな違いが見られ、これらを踏まえて、今後の両国での連携がどのように進められ得るかを考えることには意味がある。

◆日本とドイツの中小中堅企業の構造的相違点
ドイツの中小中堅企業は「ミッテルシュタンド」として国際的にも有名であり、その多くが家族経営であることが特徴である。ミッテルシュタンドの企業は、技術的な専門性を背景に、高い独立性を維持しながら長期的な視点で経営を行い、 リスクを取って国際市場に進出することが一般的である。その中には「隠れたチャンピオン」と呼ばれ、世界市場でトップのシェアを持つ中小企業も多い。 これに対し、日本の中小中堅企業は、技術力においては同様に優れた面があるものの、多くの場合、大企業の下請けや系列企業としての役割を担い、経営の独立性に欠ける側面がある。
日本の中小企業の国際展開に関しても、ドイツとの違いは大きい。ドイツの中小企業は自ら積極的に国際市場に参入し、グローバルな競争力を高めてきたが、日本の中小企業は多くの場合、 親会社や大手商社の展開に従う形で海外市場に進出するケースが一般的で、系列の中での位置づけや、商社経由での展開に頼ることが多い。これはドイツ企業との大きな差を生む要因となっている。

◆中小中堅企業における共通の強みと価値観
こうした構造的な違いの一方で、日独の中小中堅企業には共通する強みや価値観も多く存在する。技術力の面で見ると、日独両国の企業は共に非常に高い専門性を有し、その技術革新の成果は両国経済にとって欠かせない。 特に製造業や工業製品分野において、世界的にも高い評価を得ている企業が多く存在し、これが日独両国の中小企業の国際的な競争力の源泉となっている。また、両国の中小企業はその多くが長期的な視点に立った経営を重視している。 特に家族経営企業が多いドイツのミッテルシュタンドでは、次世代への事業承継を前提とした長期的なビジョンが重要視されている。

これらの価値観は、技術力の強化や安定した経営基盤の確立に寄与しており、共通の強みとして日独の中小企業を支えている。 さらに、両国の中小企業は変化への対応力が高く、イノベーションを柔軟に取り入れる姿勢を持っている。ドイツの企業は、グローバルな競争環境の中で培われた適応力により、 技術革新やデジタル化、環境への配慮といった分野でリーダーシップを発揮しているが、日本の中小企業もまた、技術革新や環境対応において高い意欲を持っており、特に国内市場での競争力を維持するために、 こうしたイノベーションの重要性を認識している。

◆日本企業が学ぶべきポイント
日本の中小中堅企業が今後、国際市場においてさらに競争力を高めるためには、ドイツのミッテルシュタンドから学ぶべき点がある。

1. 第一に経営の独立性の強化が挙げられる。日本の中小企業は大企業の下請けや系列に依存しがちであり、独自の経営戦略を持ち、柔軟な意思決定を行うための仕組みを導入することが重要と言える。

2. 積極的な国際展開を行う姿勢も必要である。日本の中小企業は、国内市場に依存するビジネスモデルが多いため、国際展開が遅れることが多い。今後の経済成長や競争力の確保のためには、早期から国際市場をターゲットにした戦略を立てることが重要であり、自社の意思で積極的に海外市場に進出することが求められる。

3. 技術力の強化も不可欠である。日本とドイツの中小企業が共に持つ技術的な専門性をさらに高め、国際的な競争優位性を確立することが、今後の持続可能な成長に繋がる。特に環境技術やデジタル化の分野では、技術革新が企業の競争力を大きく左右するため、取り組みを強化することが求められる。

◆地政学的リスクと経済安全保障
現在、日独両国は、ロシアによるウクライナ侵攻やエネルギー供給の不安定化など、地政学的リスクの高まりに直面している。こうした状況下、経済安全保障の観点からも、日独の中小中堅企業の連携が求められている。特に、サプライチェーンの強靭化は喫緊の課題であり、日独の中小企業が協力して、持続可能で安定した供給網を確保することは重要である。今後も多くの不確実性が予想される中で、日独両国の中小企業はそれぞれの強みを活かして、共にリスクに対応する体制を築くことが必要であり、特に日本の企業はドイツの経験から学び、地政学的リスクへの対応力強化の方策を模索するべきである。

日本とドイツの中小中堅企業は、構造的な違いはあるものの、共通する強みや価値観を有している。日本企業がドイツのミッテルシュタンドモデルから学ぶべき点は多い。

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